それは、ある夏の日から始まりました。最初は「少し蒸れているのかな」程度の軽い違和感だったのですが、数日のうちに、夜寝る前になると我慢できないほどの激しいかゆみがおしりの周辺を襲うようになりました。鏡で確認しても、少し赤くなっている程度で大きな変化は見られません。しかし、かゆみは日に日に増し、ついには仕事の会議中も椅子の上でモゾモゾとしてしまうほどになり、私は自分を不潔な人間のように感じて深く落ち込みました。ネットで「おしり、かゆい、女性」と検索すると、痔や性病、カビなど、不安を煽るような情報ばかりが目に入り、余計に誰にも言えなくなってしまいました。1ヶ月ほど自力で市販の軟膏を塗り続けてみましたが、一時的に収まるだけで根本的な解決には至りませんでした。ついに私は、このままでは生活が壊れてしまうと感じ、病院へ行く決意をしました。しかし、一番のハードルは「何科に行くか」でした。おしりを他人に見せるというだけでも絶望的な気持ちなのに、もし男性の先生だったらと思うと足がすくみました。必死でリサーチを重ねた結果、隣の市に女性の医師が一人で経営している肛門科のクリニックを見つけ、そこを予約しました。当日は心臓が飛び出しそうなほど緊張していましたが、クリニックの待合室はカフェのような落ち着いた雰囲気で、患者さんも女性ばかり。それだけで少し肩の力が抜けました。診察室で先生にこれまでの経緯を正直に話すと、彼女は「辛かったですね、女性には本当によくある悩みなんですよ」と優しく声をかけてくれました。診察はカーテン越しに横向きに寝た状態で行われ、時間にしてわずか数分でした。診断の結果、私の原因は「洗いすぎ」による皮膚の乾燥と、それに伴う肛門周囲皮膚炎でした。清潔にしようとしてウォシュレットを最強モードで使い、さらに石鹸でゴシゴシ洗っていたことが、皮膚のバリア機能を完全に破壊していたのです。処方されたのは、ごく弱いステロイド薬と保湿剤、そして「おしりを洗いすぎない」というシンプルな生活指導でした。半信半疑で薬を使い始め、洗い方を変えたところ、驚くことに3日目にはあんなに執拗だったかゆみが半減し、1週間後には跡形もなく消え去りました。あの1ヶ月の苦しみは何だったのかと思うほど、解決はあっけないものでした。この体験を通して私が学んだのは、専門医の力はいかに強大かということです。恥ずかしさに負けて受診を遅らせたことで、私は無駄な時間を過ごし、精神的にも自分を追い詰めていました。おしりのかゆみは、決して特別なことでも恥ずかしいことでもありません。正しい診療科を選び、信頼できる医師に心を開くこと。それが、暗いトンネルから抜け出すための、たった一つの、そして最も効果的な治し方なのです。
誰にも言えないおしりのかゆみを克服した私の勇気ある受診記録