「昨日まで優しかった患者さんが、数時間の待ち時間を境に、まるで別人のように怒鳴り散らす。そんな光景を私たちは毎日見ています」。そう語るのは、中核病院で看護師長を務める高橋さん(仮名)です。インタビューを通じて見えてきたのは、病院内での「トラブル」のもう一つの側面、すなわち医療従事者に対する過度な要求や暴言、いわゆるカスタマーハラスメント(カスハラ)の実態でした。高橋さんによれば、インターネットで医療情報を容易に得られるようになった現代、自分の期待通りの診断や薬が出ないことに対して、専門家である医師や看護師を執拗に責め立てる患者が増えていると言います。「私たちは患者さんの苦しみを少しでも和らげたいと願っていますが、身体の反応は教科書通りにはいきません。その不確実性を『医療ミスだ』と断定されるのは、スタッフの心を著しく削り取ります」。また、受付窓口でのトラブルも深刻です。保険証の不備や、書類作成の遅れに対して、「俺を誰だと思っているんだ」といった威圧的な態度を取るケースも珍しくありません。このような状況に対し、最新の病院運営では「院内警察」の配置や、防犯カメラの設置、さらにはカスハラに対する毅然とした対応方針の掲示が進んでいます。しかし、高橋さんは「最終的には信頼関係の問題です」と訴えます。医療スタッフも一人の人間であり、過度なストレス下に置かれれば、本来のパフォーマンスを発揮できなくなり、それが皮肉にも医療ミスの遠因となり得ます。患者さんに知っておいてほしいのは、病院は「お客様」を満足させる場所ではなく、「病人」を治療する共同体であるという点です。スタッフへの敬意を欠いた行動は、結果として自分自身の受ける医療の質を下げてしまう。インタビューの最後、高橋さんはこう締めくくりました。「病院でのトラブルを無くすために、私たちも説明責任を果たしますが、患者さんにも『医療の限界』を知っていただきたい。共に病気と戦うチームの一員として接してくださることが、何よりの力になります」。この言葉は、病院という場所をどう利用し、どう守っていくべきかという問いに対して、私たち利用者に重い責任を突きつけています。互いの尊厳を認め合うこと。それこそが、トラブルのない、真に癒やされる病院環境を作るための唯一の処方箋なのです。
医療現場の最前線で働くスタッフが直面するカスタマーハラスメント