健康だけが取り柄だと思っていた私に、異変が起きたのは去年の秋でした。趣味で始めた週二回のジョギング。その日もいつものように公園を走っていた時、右足のかかとの後ろに、ピリッとした小さな痛みを感じました。大したことはないだろうと、その日はそのまま走り終えましたが、翌朝、ベッドから降りて最初の一歩を踏み出した瞬間、アキレス腱の付け根あたりに激痛が走り、思わず声を上げてしまいました。歩けないほどではないものの、明らかに何かがおかしい。特に、階段を上る時の蹴り出す動作が辛く、日常生活に支障をきたし始めました。インターネットで症状を検索すると、アキレス腱炎や断裂といった怖い言葉が並び、不安は募るばかり。意を決して近所の整形外科を受診しました。医師は私の話を丁寧に聞き、痛む場所を指で押したり、アキレス腱の状態を確かめたりした後、「超音波で見てみましょう」と言いました。エコーの画面には、私の右のアキレス腱の付着部が、左に比べて少し厚くなり、周りに炎症を示す影が映っていました。診断は「アキレス腱付着部症」でした。原因は、おそらく硬いアスファルトの上でのランニングと、私のふくらはぎの筋肉の硬さだろうとのこと。治療方針は、まずジョギングを完全に休むこと、そして毎日お風呂上がりにアキレス腱のストレッチを念入りに行うことでした。さらに、炎症を抑えるための湿布も処方されました。その日から、私は言われた通りにストレッチを続けました。最初は痛くてなかなか伸ばせませんでしたが、三日、一週間と続けるうちに、少しずつ痛みが和らいでいくのがわかりました。二週間後には、朝の一歩目の激痛はなくなり、日常生活も楽になりました。完全に痛みが消えるまでには一ヶ月ほどかかりましたが、あの時、自己判断で走り続けずに病院へ行って本当に良かったと思います。たかがかかとの痛みと侮らず、専門家の診断を仰ぐことの大切さを実感した出来事でした。