片足のかかとの後ろが痛いなら整形外科へ
歩き始めの一歩、あるいは階段を上る時、片足のかかとの後ろにズキリとした痛みが走る。最初は気のせいかと思っても、痛みが続くようになると不安になるものです。特に、片足だけに症状が出ている場合、何が原因なのだろうかと悩む方は少なくないでしょう。このような症状で最初に頼るべき専門家は、整形外科医です。かかとの後ろの痛みは、その大部分がアキレス腱とその周辺組織のトラブルに起因します。アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつなぐ、体の中で最も強靭な腱です。このアキレス腱が付着するかかとの骨の周りには、スムーズな動きを助けるための滑液包という袋や、腱を覆う膜など、複雑な組織が存在します。ランニングなどのスポーツや、長時間の歩行、あるいは合わない靴を履き続けるといったことが原因で、これらの組織に過度な負担がかかると、炎症が起きて痛みが生じるのです。代表的な疾患には、アキレス腱そのものや周囲の組織が炎症を起こす「アキレス腱周囲炎」や、アキレス腱がかかとの骨に付着する部分で炎症が起きる「アキレス腱付着部症」などがあります。整形外科では、まず問診でいつから、どのような時に痛むのかを詳しく聞き、触診で痛みの場所や腫れの有無を確認します。さらに、レントゲン検査でかかとの骨に異常な出っ張り(骨棘)がないか、超音波(エコー)検査でアキレス腱や滑液包の状態をリアルタイムで観察するなど、科学的な根拠に基づいて痛みの原因を正確に診断します。原因が特定できれば、それに応じた適切な治療へと進むことができます。たかがかかとの痛みと侮らず、運動器の専門家である整形外科を受診することが、つらい症状から解放されるための最も確実な第一歩となります。