そのむくみと発熱は甲状腺の不調かも
顔のむくみと発熱。この症状から甲状腺の病気をすぐに連想する人は少ないかもしれません。しかし、喉仏の下あたりにある蝶のような形をした甲状腺の機能に異常が生じると、こうした症状が現れることがあります。特に、甲状腺ホルモンの分泌が低下する「甲状腺機能低下症」では、顔のむくみが特徴的な症状の一つとして知られています。この場合のむくみは、指で押しても跡が残らない、粘液水腫と呼ばれる硬いむくみであることが特徴で、顔つきがぼんやりとした印象になります。通常、甲状腺機能低下症自体は発熱を伴いませんが、その代表的な原因である橋本病の経過中に、亜急性甲状腺炎や無痛性甲状腺炎といった別の炎症が合併することがあります。亜急性甲状腺炎は、ウイルス感染などが引き金となり、甲状腺に炎症が起きてホルモンが一時的に血液中に漏れ出す病気です。この時、甲状腺のある首の前面に強い痛みが生じ、発熱や全身の倦怠感を伴います。一方、無痛性甲状腺炎は、橋本病の患者さんに起こりやすく、痛みはありませんが、甲状腺組織が破壊されることでホルモンが漏れ出し、動悸や体重減少といった甲状腺機能亢進の症状とともに、発熱が見られることがあります。このように、甲状腺の病気は非常に複雑で、機能低下と機能亢進、そして炎症が様々な形で絡み合って症状を引き起こします。もし、原因不明の顔のむくみや発熱に加えて、首の痛みや腫れ、異常な倦怠感、体重の急激な変化、動悸といった症状があれば、甲状腺の病気を疑ってみる必要があります。専門となる診療科は、内分泌内科や一般の内科です。血液検査で甲状腺ホルモンの値を測定すれば、診断は比較的容易です。見過ごされがちな甲状腺の不調。体が出している複数のサインを組み合わせ、適切な専門家へ相談することが大切です。