かかとの後ろの痛みがなかなか治らず、靴を履くたびに特定の場所が当たって痛い。そんな症状に悩まされている方は、もしかしたら「ハグルンド病(変形)」と呼ばれる、かかとの骨の形態的な異常が関係しているかもしれません。ハグルンド病とは、かかとの骨の後ろ側、アキレス腱が付着する部分の少し上が、生まれつき、あるいは後天的に出っ張っている状態を指します。この骨の隆起そのものが直接痛みを生じさせるわけではありません。問題は、この出っ張った骨とアキレス腱の間にある滑液包というクッション役の袋が、靴のかかと部分(カウンター)と骨との間に挟まれて、強い圧迫と摩擦を受けることにあります。この状態が繰り返されることで、滑液包に炎症が起こり(滑液包炎)、痛みや腫れ、熱感といった症状が現れるのです。特に、かかと部分が硬く、しっかりとフィットするパンプスや革靴、スケート靴などを履く人に多く見られます。また、アキレス腱が硬い人や、扁平足気味の人も、歩行時にアキレス腱が骨の出っ張りに擦れやすくなるため、発症しやすい傾向にあります。診断は、整形外科でレントゲン検査を行えば比較的容易です。レントゲン写真で、特徴的なかかとの骨の隆起が確認できます。治療の第一歩は、原因となっている靴からの圧迫を取り除くことです。かかと部分が柔らかい靴を選んだり、靴のかかと部分に穴を開けたクッション性のあるパッドを当てたりするだけでも、症状はかなり改善します。同時に、炎症を抑えるための消炎鎮痛薬の服用や湿布、そしてアキレス腱を柔軟にするためのストレッチが有効です。ほとんどの場合はこうした保存的な治療で改善しますが、症状が非常に強く、日常生活に大きな支障をきたすような場合には、出っ張った骨そのものを削り取る手術が検討されることもあります。もし、あなたの片足のかかとの痛みが靴と深く関係していると感じるなら、一度整形外科で骨の形を調べてもらうことをお勧めします。