ランニングは手軽に始められる素晴らしいスポーツですが、多くのランナーが一度は経験するのが、体のどこかしらの痛みです。中でも、片足のかかとの後ろ、アキレス腱の付け根あたりの痛みは、ランニング障害として非常にポピュラーなものの一つです。なぜランナーにこの症状が多いのでしょうか。それは、ランニングという動作そのものが、アキレス腱に繰り返し大きな負担をかけるからです。地面を蹴り出す瞬間、アキレス腱には体重の何倍もの負荷がかかります。この衝撃を何度も何度も受け続けることで、アキレス腱の付着部に微細な損傷が蓄積し、炎症を起こしてしまうのです。特に、急に走行距離を伸ばしたり、スピードを上げたり、あるいは坂道トレーニングを始めたりすると、アキレス腱への負担は急激に増大し、痛みを発症しやすくなります。また、ランニングフォームも大きく影響します。例えば、左右の足の着地の仕方が微妙に違っていたり、体の軸がぶれていたりすると、片方の足にだけ過剰なストレスがかかり、片足だけの痛みに繋がります。硬いアスファルトの上ばかり走っていることや、クッション性の失われた古いランニングシューズを履き続けていることも、リスクを高める要因です。ランナーがこの痛みを克服するためには、まず勇気を持って休むことが第一です。痛みを我慢して走り続けると、症状が悪化し、治療が長引くだけでなく、慢性化してしまう恐れがあります。休んでいる間は、水泳やエアロバイクなど、かかとに負担のかからないトレーニングで体力を維持しつつ、アキレス腱とふくらはぎのストレッチを毎日入念に行い、柔軟性を取り戻すことに専念しましょう。痛みが引いてランニングを再開する際は、いきなり元の距離に戻すのではなく、短い距離から少しずつ、痛みが出ないことを確認しながら慎重に距離を伸ばしていくことが重要です。そして、自分のフォームを見直したり、シューズを新しくしたりすることも、再発予防のために不可欠です。
ランナーを悩ます片足のかかとの後ろの痛み