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そのむくみと発熱は甲状腺の不調かも
顔のむくみと発熱。この症状から甲状腺の病気をすぐに連想する人は少ないかもしれません。しかし、喉仏の下あたりにある蝶のような形をした甲状腺の機能に異常が生じると、こうした症状が現れることがあります。特に、甲状腺ホルモンの分泌が低下する「甲状腺機能低下症」では、顔のむくみが特徴的な症状の一つとして知られています。この場合のむくみは、指で押しても跡が残らない、粘液水腫と呼ばれる硬いむくみであることが特徴で、顔つきがぼんやりとした印象になります。通常、甲状腺機能低下症自体は発熱を伴いませんが、その代表的な原因である橋本病の経過中に、亜急性甲状腺炎や無痛性甲状腺炎といった別の炎症が合併することがあります。亜急性甲状腺炎は、ウイルス感染などが引き金となり、甲状腺に炎症が起きてホルモンが一時的に血液中に漏れ出す病気です。この時、甲状腺のある首の前面に強い痛みが生じ、発熱や全身の倦怠感を伴います。一方、無痛性甲状腺炎は、橋本病の患者さんに起こりやすく、痛みはありませんが、甲状腺組織が破壊されることでホルモンが漏れ出し、動悸や体重減少といった甲状腺機能亢進の症状とともに、発熱が見られることがあります。このように、甲状腺の病気は非常に複雑で、機能低下と機能亢進、そして炎症が様々な形で絡み合って症状を引き起こします。もし、原因不明の顔のむくみや発熱に加えて、首の痛みや腫れ、異常な倦怠感、体重の急激な変化、動悸といった症状があれば、甲状腺の病気を疑ってみる必要があります。専門となる診療科は、内分泌内科や一般の内科です。血液検査で甲状腺ホルモンの値を測定すれば、診断は比較的容易です。見過ごされがちな甲状腺の不調。体が出している複数のサインを組み合わせ、適切な専門家へ相談することが大切です。
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私が右背部の激痛で胆石と診断された話
それは、友人と焼肉をたらふく食べた日の夜中のことでした。最初は、右の肩甲骨の下あたりに、筋肉痛のような鈍い痛みを感じる程度でした。食べ過ぎで胃がもたれているせいだろう、と軽く考えて横になりました。しかし、痛みは時間とともにどんどん強くなっていったのです。鈍痛は、やがて背中を内側からえぐられるような激痛に変わり、脂汗が滲み出てきました。どんな体勢をとっても痛みは和らがず、あまりの痛みに吐き気まで催してきました。これはただ事ではない。そう直感した私は、明け方を待って家族に救急外来へ連れて行ってもらいました。病院のベッドで背中を丸めて痛みに耐えていると、医師がやってきて、腹部の超音波(エコー)検査を行うと言いました。冷たいゼリーを塗られ、機械を当てられると、医師はモニターを指差して言いました。「ああ、これですね。胆のうに石がたくさんあります。胆石発作でしょう」。診断が下った瞬間、痛みの原因がわかった安堵と、自分の体に石があったという驚きで、複雑な気持ちになったのを覚えています。その日は痛み止めの点滴を受けて入院となり、絶食と水分補給で炎症が治まるのを待ちました。数日後、痛みは嘘のように引き、無事に退院できましたが、根本的な解決には手術が必要とのことでした。この経験を通じて私が学んだのは、背中の痛みを安易に考えてはいけないということです。特に、食事、とりわけ脂っこいものを食べた後に起こる右側の背中の痛みは、胆石の典型的なサインなのだと身をもって知りました。もし、私と同じように、食事の後に決まって右の背中が痛くなるという方がいたら、それは筋肉の問題ではなく、内臓からのSOSかもしれません。我慢せずに、一度、消化器内科を受診して、エコー検査を受けてみることを強くお勧めします。早期に発見できれば、私のように夜中に激痛で苦しむ前に、計画的な治療ができるはずです。
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その舌のブツブツは本当に溶連菌ですか
子供の舌が赤くブツブツしているのを見ると、多くの親御さんはまず溶連菌感染症を疑うでしょう。確かに「いちご舌」は溶連菌の非常に特徴的な症状ですが、実は、舌に似たような変化が現れる病気は他にも存在します。その代表的なものが「川崎病」です。川崎病は、主に四歳以下の乳幼児に発症する原因不明の病気で、全身の血管に炎症が起こります。その症状の一つとして、溶連菌と同じように真っ赤な「いちご舌」が見られるのです。では、どのように見分ければ良いのでしょうか。重要なのは、舌以外の症状を総合的に見ることです。溶連菌の場合、主な症状は高熱と強い喉の痛み、そして体幹を中心とした細かい発疹です。一方で川崎病は、五日以上続く高熱に加えて、両目の充血、唇の赤みやひび割れ、手足の腫れ、そして首のリンパ節の腫れといった特徴的な症状を伴います。これらの症状が複数当てはまる場合は、川崎病の可能性を強く考える必要があります。川崎病は、心臓の血管に瘤(こぶ)ができる合併症を引き起こすリスクがあり、早期に適切な治療を開始することが極めて重要です。そのため、自己判断は非常に危険です。また、猩紅熱(しょうこうねつ)も溶連菌が原因で起こる病気で、いちご舌と全身の発疹を特徴としますが、これは溶連菌感染症の一つの病型です。他にも、稀ではありますが他のウイルス感染症やビタミン欠乏症などでも舌に変化が見られることがあります。舌の先端が少し赤い、ブツブツしている、といった初期の変化に気づいた時、それは体からの重要なサインです。溶連菌だろうと決めつけずに、発熱の期間や他の症状の有無を注意深く観察し、その情報を正確に医師に伝えることが、正しい診断への鍵となります。子供の舌に異常を見つけたら、迷わず小児科を受診し、専門家の判断を仰ぎましょう。