家族の誰か、特に子供に「いちご舌」の症状が現れ、それが溶連菌感染症によるものだと診断された場合、多くの人が心配するのは「この病気は他の家族にうつるのか?」ということでしょう。結論から言うと、溶連菌感染症は感染力が強く、家庭内や集団生活の場で感染が広がりやすい病気です。いちご舌そのものがうつるわけではありませんが、その原因となっている溶連菌が、人から人へと感染するのです。溶連菌の主な感染経路は二つあります。一つは「飛沫感染」です。感染した人の咳やくしゃみ、会話などで飛び散る、ウイルスを含んだ小さな飛沫(しぶき)を、周りの人が吸い込むことで感染します。締め切った室内など、人が密集する環境では特に注意が必要です。もう一つの主要な感染経路が「接触感染」です。感染者が、咳やくしゃみを手で押さえた後、その手でドアノブやテーブル、おもちゃなどに触れると、そこに菌が付着します。他の人がその場所に触れ、さらにその手で自分の口や鼻、目に触れることで、菌が体内に侵入し、感染が成立します。このため、家庭内で一人が発症すると、食器やタオルの共用などを通じて、家族に感染が広がるリスクが高まります。家庭内での感染拡大を防ぐためには、基本的な感染対策を徹底することが何よりも重要です。まず、感染者はもちろん、家族全員が「手洗い」をこまめに行うこと。石鹸と流水で、指の間や手首まで丁寧に洗いましょう。アルコールによる手指消毒も有効です。感染者は、なるべくマスクを着用し、咳やくしゃみをする際はティッシュや腕で口と鼻を覆う「咳エチケット」を徹底します。また、食器やコップ、箸、タオルなどは、感染者と他の家族とで共用するのを避けましょう。感染者が使った食器は、洗浄後にしっかりと乾燥させることが大切です。感染者が触れた可能性のあるドアノブやスイッチ、リモコンなどは、市販の除菌シートやアルコールでこまめに拭き掃除をすると、接触感染のリスクを減らすことができます。兄弟姉妹がいる場合は、特に注意が必要です。同じおもちゃで遊んだり、体を寄せ合ったりすることで感染しやすいため、しばらくは接触を避ける工夫も必要かもしれません。こうした対策を徹底することで、家庭内での感染リスクを最小限に抑えることが可能です。