足のむくみと心臓の病気。一見、すぐには結びつかないかもしれませんが、すねを押してへこんだまま戻らないという症状は、心臓の機能が低下していることを示す「心不全」の代表的なサインの一つです。私たちの心臓は、一日におよそ十万回も拍動し、全身に血液を送り出す力強いポンプです。しかし、高血圧や心筋梗塞、弁膜症など、様々な原因でこのポンプ機能が弱まってしまうと、血液を効率よく循環させることができなくなります。これが心不全の状態です。心臓から送り出される血液の勢いが弱まると、全身の血流、特に心臓から遠い足の血液が、重力に逆らって心臓へ戻ってくる力が弱くなります。その結果、血液中の水分が血管の外に漏れ出し、足の皮下組織に溜まってしまうのです。これが、すねのへこみ、つまりむくみの正体です。心不全によるむくみは、一般的に両足に現れ、夕方になるとひどくなり、朝になると少し改善するという特徴があります。そして、すねのへこみ以外にも、心不全には注意すべきサインがあります。例えば、「以前より階段を上るのがきつい」「少し動いただけでも息切れがする」といった労作時の息切れ。「夜、横になると咳が出て眠れないが、起き上がると楽になる」という症状。あるいは、急激な体重増加も、体に水分が溜まっているサインとして重要です。これらの症状が、すねのへこみと同時に現れている場合、心臓が助けを求めるSOSを発している可能性が非常に高いと言えます。専門となる診療科は、循環器内科です。心電図や心臓超音波(エコー)検査などを行うことで、心臓の状態を詳しく調べることができます。早期に発見し、適切な治療を開始すれば、心臓の負担を減らし、症状をコントロールすることが可能です。たかがむくみと侮らず、体の変化に耳を傾け、心臓の専門家に相談する勇気を持ってください。