溶連菌感染症で舌が赤くつぶつぶになる理由
子供が喉の痛みを訴え、熱を出した時、ふと口の中を覗くと舌が真っ赤になり、表面がまるで苺のようにブツブツになっているのを見て驚いた経験のある親御さんは少なくないでしょう。これは溶連菌感染症の代表的な症状の一つである「いちご舌」です。この特徴的な症状は、舌の先端部分から目立ち始めることも多く、病気のサインとして非常に重要です。では、なぜ溶連菌に感染すると、このような舌の変化が起こるのでしょうか。そのメカニズムは、溶連菌が産生する毒素にあります。溶連菌、正式にはA群溶血性レンサ球菌という細菌は、感染すると体内で「発赤毒(ほっせきどく)」または「外毒素」と呼ばれる物質を放出します。この毒素が血流に乗って全身に広がり、様々な症状を引き起こすのです。皮膚に作用すれば、全身に細かい赤い発疹が現れます。そして、舌に作用すると、舌の表面にある味を感じるための乳頭という小さな突起が炎症を起こして赤く腫れ上がります。初期段階では、舌の表面に白い苔のようなものが付着し、その中から赤いブツブツが透けて見えることがあります。これを「白苔舌(はくたいぜつ)」と呼びます。その後、数日が経過すると白い苔が剥がれ落ち、舌全体が真っ赤に腫れてブツブツが際立つ、まさしく苺のような状態へと変化します。これが「いちご舌」の正体です。特に舌の先端は、こうした変化に敏感で、最初に違和感や見た目の変化に気づきやすい部分でもあります。喉の痛みや発熱といった典型的な風邪症状に加えて、お子さんの舌先がいつもより赤い、あるいはブツブトしていると感じたら、それは単なる風邪ではなく溶連菌感染症の可能性があります。このサインを見逃さず、速やかに小児科を受診することが、適切な診断と治療への第一歩となるのです。