年を重ねるにつれて、立ち上がりや歩き始めに膝が痛む、階段の上り下りが辛い、といった悩みを抱える方は少なくありません。こうした高齢者の膝の痛みの多くは、長年の使用によって膝の軟骨がすり減り、炎症が起きる「変形性膝関節症」が原因です。では、この痛みをどこに相談すれば良いのでしょうか。近所の整骨院やマッサージで一時的に痛みを和らげている方もいるかもしれませんが、根本的な解決を目指すなら、まずは整形外科で医師による正確な診断を受けることが不可欠です。ここに、長年膝の痛みに悩んでいた田中さん(仮名・七十五歳)の事例があります。田中さんは、五年ほど前から膝に痛みを感じていましたが、「歳のせいだから仕方ない」と諦め、痛みが強い時だけ近所の整骨院で電気治療を受けていました。しかし、痛みは徐々に悪化し、最近では杖なしでは買い物にも行けなくなってしまいました。心配した娘さんに強く勧められ、田中さんは重い腰を上げて初めて整形外科を受診しました。レントゲン検査の結果、膝の軟骨はかなりすり減り、変形性膝関節症が進行していることがわかりました。医師は、田中さんの膝の状態を丁寧に説明した上で、まずはヒアルロン酸の関節内注射と、理学療法士によるリハビリテーションを始めることを提案しました。最初は半信半疑だった田中さんですが、数回の注射と、太ももの筋肉を鍛える簡単な運動を続けるうちに、膝の痛みが明らかに軽くなっていくのを実感しました。今では、杖なしで近所の公園まで散歩できるまでに回復し、表情もすっかり明るくなりました。田中さんのように、整骨院や整体と病院との違いを正しく理解していない方は意外と多いかもしれません。整骨院や整体では、医師ではないため、レントゲン検査や診断、薬の処方や注射といった医療行為はできません。あくまでも痛みを和らげるための施術を行う場所です。痛みの根本原因を突き止め、医学的根拠に基づいた治療を行うためには、まず整形外科を受診し、自分の膝が今どのような状態にあるのかを正確に知ることが何よりも大切なのです。