溶連菌感染症は、適切な治療を受ければ数日で症状が改善する、比較的ありふれた感染症です。しかし、「喉の痛みが治まったから」「熱が下がったから」と油断してはいけないのが、この病気の本当に怖いところです。なぜなら、治療が不十分だと、後から深刻な合併症を引き起こす可能性があるからです。その危険性を知らせる最初のサインが、発熱や喉の痛みととも現れる舌の異常、特に舌先の赤いやつぶつぶかもしれません。溶連菌の合併症として特に注意が必要なのは、リウマチ熱と急性糸球体腎炎です。リウマチ熱は、溶連菌感染から数週間後に、心臓、関節、神経などに炎症が起こる病気です。特に心臓の弁に障害が残ると、心臓弁膜症という後遺症に繋がり、将来にわたって生活に影響を及ぼす可能性があります。一方、急性糸球体腎炎は、腎臓のフィルター機能を持つ糸球体に炎症が起こる病気です。血尿やたんぱく尿、むくみ、高血圧といった症状が現れ、重症化すると腎不全に至ることもあります。これらの合併症は、溶連菌そのものが心臓や腎臓を直接攻撃するわけではありません。感染によって体内に作られた免疫反応が、なぜか自分の体の組織を誤って攻撃してしまうことで引き起こされると考えられています。この恐ろしい合併症を防ぐ唯一にして最も確実な方法は、原因となる溶連菌を抗生物質で完全に叩くことです。そのためには、医師から処方された抗生物質を、症状が消えた後も指示された期間、必ず最後まで飲み切ることが絶対条件となります。子供が舌先の痛みを訴え、いちご舌のサインが見られた時、それは単なる症状ではなく、「ここでしっかり治療しないと、後で大変なことになるよ」という体からの警告なのです。このサインを真摯に受け止め、確実な治療に繋げることが、子供の未来の健康を守る上で何よりも重要です。