水疱瘡、つまり水ぼうそうと聞くと、多くの人は子供時代にかかる、比較的軽い病気というイメージを抱くのではないでしょうか。しかし、この常識は大人には当てはまりません。もし、子供の頃に水疱瘡にかかったことがなく、ワクチンも未接種の大人がこの病気に感染すると、子供の場合とは比較にならないほど重症化するリスクが非常に高いのです。大人の水疱瘡は、単なる子供の病気の延長線上にはありません。まず、発疹の数が子供よりも圧倒的に多く、全身を埋め尽くすように現れることも珍しくありません。一つ一つの水ぶくれが大きく、治癒後には痕が残りやすいのも特徴です。そして、何よりも辛いのが症状の強さです。発疹が現れる前から、インフルエンザのような激しい倦怠感や筋肉痛、そして三十九度を超えるような高熱が数日間続きます。この発熱だけでも体力は著しく消耗しますが、それに加えて、耐え難いほどの強いかゆみが全身を襲います。かきむしりたい衝動に駆られますが、水ぶくれを潰してしまうと細菌感染のリスクが高まり、さらに症状を悪化させる原因にもなります。大人の水疱瘡が危険なのは、こうした表面的な症状だけではありません。最も警戒すべきは、合併症の発生率が子供よりも格段に高いことです。代表的な合併症には、水痘肺炎や脳炎、髄膜炎、肝炎などがあり、これらは命に関わることもある深刻な状態です。特に水痘肺炎は、成人の水疱瘡患者の約二割に発症するとも言われ、激しい咳や呼吸困難を引き起こします。このように、大人の水疱瘡は、本人の苦痛が大きいだけでなく、社会生活にも多大な影響を及ぼします。長期の休養を余儀なくされ、回復後も体力低下や痕の問題に悩まされることもあります。もし自分が水疱瘡に未感染であると知っているなら、たかが子供の病気と侮ることなく、その危険性を正しく認識し、適切な予防策を講じることが何よりも重要です。
大人が水疱瘡になると想像以上に大変です