背中の痛みは日常的によくある症状ですが、中には一刻を争う、命に関わる病気のサインである場合があります。いつもと違う、我慢できないほどの痛みを感じた時は、様子を見ることなく、直ちに医療機関を受診する必要があります。では、どのような症状が危険なサインなのでしょうか。まず、痛みの強さと発症の仕方です。これまで経験したことのないような激痛が、突然、背中に走った場合は非常に危険です。特に、背中が引き裂かれるような痛みと表現される場合は、大動脈解離の可能性があります。これは、心臓から全身へ血液を送る最も太い血管である大動脈の壁が裂けてしまう病気で、極めて致死率が高く、緊急手術が必要です。痛みが胸から背中へ移動するような感覚も特徴です。また、右の背中の激痛とともに、胸の圧迫感や締め付けられるような痛みがある場合は、心筋梗塞の関連痛かもしれません。これもまた、迅速な治療が必要な病気です。次に、痛みに伴う他の症状です。高熱や悪寒、冷や汗を伴う背中の痛みは、腎盂腎炎や胆のう炎、膵炎といった重い感染症や炎症が起きているサインです。これらの病気は敗血症に進展する危険があり、早期の治療が不可欠です。さらに、背中の痛みに加えて、手足のしびれや麻痺、うまく歩けない、ろれつが回らないといった神経症状が現れた場合は、背骨の中の脊髄や神経が圧迫されているか、脳卒中の可能性も考えられます。これらの危険なサインが一つでも当てはまる場合は、かかりつけ医の診察を待つのではなく、夜間や休日であっても救急外来を受診するか、ためらわずに救急車を呼んでください。自己判断による時間のロスが、取り返しのつかない事態を招くことがあります。いつもの痛みとは違う、という自分の直感を信じ、迅速に行動することが、命を守るために最も大切なことです。